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注文住宅の落とし穴!防水工事の確認ポイントとよくある失敗例

「こだわりの注文住宅だから、まさか雨漏りなんて…」そう思っていても、残念ながらトラブルは起こり得ます。特にベランダや屋上(陸屋根)、外壁からの水の侵入は、建物の寿命を大きく縮める深刻な問題です。新築時の施工不良が見過ごされたまま数年が経過し、ある日突然、天井にシミができて発覚するケースも少なくありません。

この記事は、すでに雨漏りの兆候にお悩みの方や、将来的なリフォーム・補修を検討されている方に向けて、注文住宅の防水工事で見落とされがちな「落とし穴」と、よくある失敗例、そしてご自身でできる確認ポイントをプロの視点で解説します。

なぜ起こる?注文住宅の防水トラブルとよくある失敗例

注文住宅はデザイン性が高い反面、屋根の形状が複雑だったり、広いバルコニーや陸屋根を採用したりと、構造的に雨漏りのリスクを抱えやすい側面もあります。しかし、最大の「落とし穴」は、デザインや素材ではなく、目に見えない部分の「施工」に潜んでいます。

「新築だから大丈夫」は危険なサイン

「新築時にしっかり施工してもらったはず」という思い込みが、初期サインの見逃しにつながることがあります。注文住宅は施工管理が複雑になりがちで、残念ながら業者や職人の技術力によって品質に差が出ることも事実です。特に防水工事は、最終的に塗装などで隠れてしまう部分。だからこそ、数年後に問題が表面化しやすいのです。

失敗例1:ベランダ・バルコニーの下地処理不足

最も多く見られる失敗例が、ベランダやバルコニーの「下地処理」の不備です。防水工事は、塗装やシートを貼る前の清掃・乾燥が命です。

  • 高圧洗浄が不十分で、ホコリやゴミが残ったまま施工した。
  • 下地が十分に乾燥していないうちに次の工程に進んでしまった。

このような状態では、新しい防水層が下地にしっかりと密着しません。結果、施工からわずか数年で防水層が風船のように膨れる「浮き・膨れ」や、そこから亀裂が入って剥がれてしまう「剥離」が発生します。これが雨漏りの直接的な原因となります。

失敗例2:屋上・陸屋根の工法選択ミス

モダンな注文住宅に多い「陸屋根(ろくやね)」(平らな屋根)は、常に雨水にさらされるため、高度な防水処理が求められます。ここでの失敗は「工法の選択ミス」です。

例えば、既存の防水層がまだ湿気を含んでいる状態にもかかわらず、その上から新しい防水材をぴったりと塗り重ねる「密着工法」を選んでしまうケース。これでは、古い防水層と新しい防水層の間で湿気が逃げ場を失い、結局は「膨れ」や「剥がれ」を引き起こします。

リフォームの際は、下地の状態を正確に診断し、場合によっては湿気を逃がす通り道を作る「通気緩衝工法(絶縁工法)」などを選ぶ必要があります。この見極めができないと、工事をやり直すことになりかねません。

失敗例3:外壁・窓サッシ周りのシーリング(コーキング)劣化

雨漏りの原因は、屋根やベランダだけとは限りません。意外な落とし穴が「外壁」と「窓サッシ」です。

外壁材(サイディングなど)のつなぎ目や、窓サッシの枠を埋めているゴム状の素材を「シーリング(またはコーキング)」と呼びます。これは紫外線や風雨によって5年〜10年ほどで劣化し、ひび割れたり、痩せて隙間ができたりします。

そのわずかな隙間から雨水が壁の内部に侵入し、気づかないうちに柱や断熱材を腐食させ、室内での雨漏りとして発覚します。防水工事というと床面ばかりに目が行きがちですが、こうした「壁面の防水」も見落としてはならない重要なポイントです。

ご自宅で今すぐ確認!雨漏りの初期サインとセルフチェックリスト

深刻な事態になる前に、ご自宅で「雨漏りのサイン」が出ていないか確認してみましょう。リフォームや補修を考えるきっかけとして、以下の点をチェックしてみてください。

目に見える危険信号

以下のような症状が1つでも見られたら、専門家による点検を推奨します。

  • 天井や壁紙(クロス)に、シミや黄ばみ、黒ずみがある。
  • 壁紙が特定の場所だけ浮いたり、剥がれたりしている。
  • 雨が降った後、室内がカビ臭く感じる。
  • ベランダやバルコニーの床面に、ひび割れや水ぶくれのような膨らみがある。
  • 外壁に明らかなひび割れ(クラック)がある。
  • 外壁のシーリング(コーキング)が切れていたり、剥がれていたりする。

特定箇所の確認ポイント

ご自身で確認できる、特に注意したい箇所をまとめました。安全に注意して、晴れた日に点検してみましょう。

場所確認ポイント
ベランダ・バルコニー雨がやんだ後も、床面に水たまりが長時間残っていないか?
排水溝(ドレン)の周りにゴミが詰まったり、泥が溜まったりしていないか?
床の表面を手で触って、ザラザラ(塗膜が劣化)していないか?
屋上(陸屋根)ベランダと同様の点検。特に、立ち上がり部分(壁との境目)に亀裂はないか?
手すり壁の上にかぶせてある「笠木(かさぎ)」のつなぎ目に隙間はないか?
外壁外壁に幅0.3mm以上(名刺の厚み程度)のひび割れはないか?
外壁を触ったときに、手に白い粉が付かないか?(チョーキング現象)
窓サッシ周り窓枠と外壁の隙間を埋めているシーリング材に、切れ目や痩せている部分はないか?
窓の下の壁(室内側)が湿っぽかったり、壁紙が剥がれたりしていないか?

知っておきたい防水工事の種類と特徴

「防水工事」と一口に言っても、場所や現在の状態によって適した工法が異なります。リフォームや補修で失敗しないためには、どのような選択肢があるのかを知っておくことが大切です。

ウレタン防水(塗膜防水)

液状のウレタン樹脂を塗り重ねて、防水層を作る工法です。液体なので、ベランダやバルコニーのような複雑な形状の場所でも、継ぎ目のないシームレスな防水層を作れるのが最大のメリットです。日本の戸建て住宅で最も多く採用されていますが、職人の手作業によるため、規定の厚みを均一に塗る技術力が仕上がりを左右します。

FRP防水

FRPとは「繊維強化プラスチック」の略で、ガラス繊維のシートにポリエステル樹脂を含ませて硬化させる工法です。非常に硬く、軽量で、摩擦に強いため、新築の戸建て住宅のバルコニー(人がよく歩く場所)で多く使われます。硬化が速いのも特徴ですが、紫外線にやや弱いため、トップコート(保護塗装)の定期的な塗り替えが必須です。

シート防水

塩化ビニル製やゴム製の防水シートを、接着剤や機械で下地に固定する工法です。主に広い陸屋根(屋上)などに適しています。工場生産のシートを使うため、厚みが均一で品質が安定しやすいメリットがあります。ただし、シート同士のつなぎ目(ジョイント)の処理が甘いと、そこから水が侵入する弱点もあります。

アスファルト防水

古くからある工法で、アスファルトを含んだシートを何層にも重ねて厚い防水層を作ります。非常に信頼性が高く、耐用年数も長いのが特徴ですが、重量があり施工も大掛かりになるため、主に鉄筋コンクリート造のマンションやビルの屋上に使われます。

リフォーム・補修で工法選びが重要な理由

重要なのは、「今の状態にどの工法が最適か」を見極めることです。例えば、FRP防水が劣化した上に、下地処理をせず安易にウレタン防水を塗っても、すぐに剥がれてしまいます。また、雨漏りの原因が特定できていないのに防水工事をしても、別の場所から水が侵入し続ければ意味がありません。

リフォームでの防水工事は「新築時と全く同じ工法」が正解とは限らないのです。現在の劣化状況を正確に診断し、最適な工法(場合によっては既存の防水層を全て撤去する)を選ぶことが、失敗を避ける最大の鍵となります。

失敗しないリフォーム・補修業者の選び方

防水工事の失敗は、材料の良し悪しよりも「業者の選定ミス」によって引き起こされることが大半です。大切な住まいを守るために、以下のポイントで業者を見極めてください。

「原因特定」を徹底しているか

「天井にシミがある」という相談に対し、いきなり「屋根の防水をやり直しましょう」と提案する業者には注意が必要です。

優良な業者は、まず「なぜ、どこから水が来ているのか」の原因特定を最優先します。場合によっては、実際に水を流して侵入経路を特定する「散水調査」や、壁の内部の水分を可視化する「サーモグラフィー調査」など、専門的な調査を行います。

原因を特定せずに工事を始めると、見当違いの補修になってしまい、雨漏りが再発する可能性が非常に高くなります。

複数の工法と見積もりを提案できるか

「うちはウレタン防水しかやっていない」といった単一工法しか勧めない業者ではなく、お客様の建物の状況や予算に合わせて、複数の工法(例:「今回はシート防水の方が適しています」「ここは部分補修で対応可能です」など)をメリット・デメリットと共に提案してくれる業者を選びましょう。

また、必ず2〜3社から相見積もりを取り、工事内容や費用を比較検討することが重要です。安さだけで選ぶと、必要な下地処理が省かれているなどの「落とし穴」にはまる危険があります。

保証とアフターサービスの内容

工事が終わったら終わり、ではありません。「どのような工事に、何年間の保証が付くのか」を必ず書面で確認しましょう。

特に重要なのが、「施工不良による雨漏りが再発した場合、無償で対応してくれるか」という点です。保証内容が曖昧な業者は避け、アフターサービスや定期点検の体制がしっかりしている、地域に根ざした信頼できる業者を選ぶことをお勧めします。

まとめ

こだわりの注文住宅も、経年劣化や施工時のわずかな見落としによって防水機能は低下していきます。「落とし穴」は、目に見えない下地処理や、専門家でなければ判断が難しい工法の選択に潜んでいます。

「天井のシミ」や「壁紙の剥がれ」といった小さなサインを見逃さず、早期に点検することが大切です。そして、万が一補修やリフォームが必要になった場合は、価格だけでなく、雨漏りの「原因特定」を徹底し、ご自宅の状態に最適な工法を提案してくれる誠実な専門業者を選ぶことが、防水工事を成功させ、住まいの寿命を延ばす最も確実な方法と言えるでしょう。

防水工事に関するよくある質問(FAQ)

Q1. 防水工事の費用相場はどれくらいですか?

A1. 工法や施工面積、下地の劣化状況によって大きく変動します。一般的な戸建て住宅のベランダ(10㎡程度)の場合、ウレタン防水で10万円〜20万円、FRP防水で12万円〜25万円程度が目安となります。ただし、既存の防水層を撤去する必要がある場合などは、別途費用がかかります。必ず現地調査の上で見積もりを取得してください。

Q2. 防水工事と外壁塗装は一緒にやるべきですか?

A2. もし外壁の劣化(ひび割れ、シーリングの劣化)も見られる場合、同時に行うことを強くお勧めします。理由は、どちらも「足場」を必要とする工事だからです。足場の設置・解体費用(一般的に15万円〜25万円程度)を一度で済ませられるため、トータルのコストを大幅に抑えることができます。また、外壁とベランダを同時にリフォームすることで、建物の防水性を一新できます。

Q3. 新築から10年未満で雨漏りした場合、保証は適用されますか?

A3. 新築住宅には「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」に基づき、引き渡しから10年間の「契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)」が義務付けられています。この中には「雨水の侵入を防止する部分」も含まれます。
したがって、新築から10年以内に施工不良が原因で雨漏りが発生した場合は、ハウスメーカーや工務店に無償で補修を請求できる可能性が非常に高いです。まずは施工を担当した会社に速やかに連絡し、状況を説明してください。

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