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施工ミス?自然災害?建築中に発生する漏水の原因別・対応チェックリスト

夢のマイホームや、大規模なリフォーム。家が形作られていく様子は、何物にも代えがたい喜びがあります。しかし、もし建築の途中で「漏水」を発見してしまったらどうでしょうか。雨が壁を伝っていたり、天井から水が滴っていたりするのを見れば、誰でも不安になるはずです。

この記事では、建築中に漏水が発生した際、冷静に対応するための「原因の見極め方」と「行うべきこと」を、原因別のチェックリスト形式で詳しく解説します。

建築中の漏水、まず何をすべきか?

漏水を発見した際、パニックにならずに初期対応を行うことが、被害を最小限に食い止める鍵となります。まずは以下の3つのステップを実行してください。

安全の確保と被害拡大の防止

水は電気と非常に相性が悪く、漏電や感電のリスクを伴います。

  • 漏水箇所の近くにコンセントや電気配線がある場合は、絶対に触らず、安全な場所にあるブレーカーを落としてください。
  • 水が床に広がっている場合、バケツやタオル、吸水シートなどを使って水を受け止め、被害が他の部屋や階下に及ばないようにします。
  • 可能であれば、貴重品や濡れては困る資材を安全な場所へ移動させます。

注意点:ご自身で原因を探ろうとして、壁や天井を剥がしたり、工具を使ったりするのは絶対に避けてください。状況を悪化させたり、後の責任問題があいまいになったりする可能性があります。

証拠保全:写真と記録の重要性

状況が落ち着いたら、必ず「証拠」を残します。これは、後の施工業者との協議や保険申請において、客観的な事実を示すために不可欠です。

  • 写真:水が漏れている箇所、濡れている範囲、水滴の様子などを、近景と遠景の両方で撮影します。
  • 動画:水がポタポタと垂れている様子や、壁を伝っている様子を動画で記録すると、より状況が伝わりやすくなります。
  • メモ:発見した日時、その時の天候(雨の強さ、風向きなど)、発見時の詳しい状況を時系列で記録しておきます。

連絡の順番:誰に最初に伝えるべきか

証拠保全ができたら、速やかに建築を担当している会社に連絡します。連絡の優先順位は以下の通りです。

  1. 現場監督または施工業者(工務店・ハウスメーカー)の担当者:
    まずは現場の責任者に第一報を入れます。「いつ、どこで、どのような状況か」を冷静に伝えてください。すぐに現場へ確認に来てもらうよう依頼します。
  2. 設計事務所(設計と施工が別の場合):
    設計事務所が監理を行っている場合は、そちらにも報告を入れ、状況の確認を依頼します。

漏水の二大原因:施工ミスと自然災害

建築中の漏水は、その原因によって対応が大きく異なります。原因は大きく「施工ミス」か「自然災害」のどちらか(あるいは両方の複合)に分けられます。

「施工ミス」が疑われるケース

施工ミスによる漏水は、本来あるべき防水処理や施工が正しく行われていない場合に発生します。これは施工業者が責任を負うべき「瑕疵(かし)」にあたります。

  • 屋根・外壁の防水処理の不備:
    防水シート(ルーフィング)の重ね方や貼り方、端部の処理が不適切だと、雨水が侵入します。
  • サッシ(窓)周りのシーリング(コーキング)不良:
    窓枠と壁の隙間を埋めるシーリング材の充填が不十分だったり、手順を間違えたりすると、そこから水が浸入します。
  • 配管の接続ミス:
    給排水管や雨どいの接続部分が甘かったり、接着剤の塗布忘れがあったりすると、完成後だけでなく工事中でも漏水します。
  • バルコニーや陸屋根の排水設計ミス:
    排水溝への勾配(水が流れるための傾斜)が逆になっていたり、排水口の処理が不十分だったりすると、水が溜まりやすく漏水の原因となります。

「自然災害」が原因となるケース

一方で、施工自体に問題はなくても、想定を超える自然の力が原因で漏水することもあります。

  • 台風やゲリラ豪雨:
    まだ屋根や壁が完全にふさがっていない「工事の途中段階」で、横殴りの暴風雨にさらされ、養生(シートなどでの保護)が追いつかずに内部に水が侵入するケースです。
  • 飛来物による損傷:
    強風で物が飛んできて、設置したばかりの屋根材や窓ガラスが破損し、そこから雨水が侵入するケースです。

原因の切り分けはなぜ重要か?(責任の所在)

この二つを切り分けることは非常に重要です。なぜなら、「誰がその補修費用を負担するのか」が変わってくるからです。

  • 施工ミスの場合:
    原則として、施工業者の「契約不適合責任(瑕疵担保責任)」に基づき、業者の費用負担で完全な補修を行う義務があります。
  • 自然災害の場合:
    多くの場合、施工業者が加入している「建築工事保険」などの保険を使って対応することになります。ただし、養生が不十分だったなど、業者の管理体制に不備があった場合は、業者の責任が問われることもあります。

【原因別】対応と確認のチェックリスト

原因がどちらにありそうかによって、施主(お客様)として確認すべきこと、要求すべきことが変わってきます。以下のチェックリストを参考にしてください。

ケース1:施工ミスが疑われる場合のチェックリスト

雨漏りの原因が、台風などではなく、通常の雨や施工途中の通水テストなどで発生した場合、施工ミスが強く疑われます。

チェック項目確認・要求すべき内容
原因の特定施工業者に対し、散水試験(水をかけて再現するテスト)や目視による、徹底的な原因究明を要求します。「おそらくここだろう」という曖昧な判断で済ませないことが重要です。
責任の所在施工業者に「契約不適合責任」に基づく無償での修補を明確に要求します。
補修の方法「どのように補修するのか」の計画書(工法、使用材料、スケジュール)を提出してもらいます。濡れた断熱材や木材の交換範囲なども、具体的に確認します。
再発防止なぜそのミスが起きたのか、今後どのようにチェック体制を強化し、再発を防ぐのかを文書または口頭で説明してもらいます。
書類の確認工事の仕様書や図面と、実際の施工状況が合っているかを確認してもらいます。

ケース2:自然災害(台風・豪雨など)の場合のチェックリスト

工事の途中で、明らかにキャパシティを超える暴風雨に見舞われた場合、こちらのケースに該当する可能性が高くなります。

チェック項目確認・要求すべき内容
保険の確認施工業者が「建築工事保険」や「請負業者賠償責任保険」に加入しているかを確認します。通常、まっとうな業者であれば必ず加入しています。
保険の適用今回の被害が保険適用の対象となるか、業者から保険会社へ速やかに確認してもらいます。施主として撮影した写真や記録も提出し、協力します。
業者の管理責任自然災害が原因であっても、「養生(シート)が不十分だった」「強風が予想されていたのに資材を放置していた」など、業者の管理体制に不備がなかったかを確認します。不備があれば、その点についても協議します。
補修の範囲保険が適用される範囲(建物本体のみか、濡れた資材の交換も含むかなど)を明確にし、どこまでが無償(保険適用)での補修となるかを確認します。
施主の保険(注意点)施主が契約する「火災保険」は、原則として「建物の引き渡し後」から適用されます。建築中の建物本体には使えないことがほとんどです。

補修工事と再発防止のために

原因が特定され、補修の方針が決まった後も、施主として注意深く見守る必要があります。

適切な補修方法の確認

漏水は「原因の根絶」がすべてです。表面だけをきれいにしても、水の侵入経路が残っていれば必ず再発します。
特に注意すべきは「濡れた断熱材」や「内部の木材」です。これらを濡れたまま放置すると、カビの発生、シロアリの誘引、構造材の腐食につながります。補修計画に「濡れた断熱材はすべて交換する」「木材は十分に乾燥させる、または交換する」といった内容が含まれているかを厳しくチェックしてください。

工事業者との協議と「瑕疵担保責任」

建築中のトラブルは、施工業者との信頼関係を揺るがす一大事です。しかし、感情的にならず、あくまで「事実」に基づいて冷静に協議することが大切です。
施工ミスであった場合、施工業者は「契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)」を負います。これは、契約した内容と異なるもの(欠陥があるもの)を引き渡してはならないという法律上の責任です。建築中の漏水は、まさにこの責任が問われる典型的なケースです。


施主としては、この責任に基づき「完全な状態に修復すること」を堂々と要求する権利があります。補修が完了したら、再度同じ条件(散水試験など)で漏水が再発しないかを必ず確認しましょう。

まとめ

建築中の漏水は、施主様にとって非常にショックな出来事です。しかし、重要なのは、発見後にいかに冷静に、かつ的確に行動するかです。まずは安全を確保し、証拠を記録し、速やかに施工業者に連絡してください。そして、原因が「施工ミス」なのか「自然災害」なのかを見極め、本記事のチェックリストを参考に、業者と補修方法や責任の所在について具体的に協議を進めましょう。

不安な点はそのままにせず、納得のいく説明と確実な補修を求めることが、安心して新生活をスタートさせるために不可欠です。

よくある質問(FAQ)

Q1: 建築中に濡れた木材や断熱材は、乾かせば再利用できますか?

A1: 一概には言えません。木材(柱や梁など)は、表面が濡れた程度であれば十分に乾燥させることで再利用可能な場合が多いです。しかし、断熱材(特にグラスウールなど)は、一度水分を含むと断熱性能が著しく低下し、内部でカビが発生する温床となります。そのため、濡れた断熱材は原則として「交換」を要求することを強くお勧めします。施工業者に交換範囲を明確に確認してください。

Q2: 施工業者がミスを認めず、対応してくれません。どうすればいいですか?

A2: まずは協議の内容を書面に残すことが重要です。それでも進展しない場合は、第三者の専門家に相談することを検討してください。具体的には、建築士やホームインスペクター(住宅診断士)に依頼し、中立的な立場から漏水の原因調査と報告書の作成を依頼します。その報告書を元に再度協議するか、住宅紛争処理支援センターや弁護士など、法的な相談窓口を利用することも選択肢となります。

Q3: 補修により工期が遅れた場合、賠償などを請求できますか?

A3: 契約書の内容によります。工事請負契約書に「遅延損害金」に関する取り決めがあれば、それに従って請求できる可能性があります。ただし、遅延の理由が台風などの不可抗力(自然災害)である場合は、請求が認められないこともあります。まずは契約書を確認し、施工業者の担当者と工期の見通しについて話し合うことが先決です。

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