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リフォーム業者が語る「ここが危ない!」漏水が起きやすい建物構造と補修の実態

「天井にシミができた…」「壁紙がなぜか剥がれてくる…」そんなお住まいの異変に、不安を感じていませんか?その原因は、もしかしたら建物の構造に潜む「漏水」かもしれません。漏水は、気づかないうちに静かに進行し、建物の寿命を縮める深刻なトラブルに発展することもあります。

この記事では、数多くのリフォーム現場を見てきたプロの視点から、どのような建物構造が漏水リスクを抱えやすいのか、そしてその補修の実態について、具体的かつ分かりやすく解説していきます。大切なお住まいを守るための知識として、ぜひ最後までお読みください。

知らぬ間に進行する漏水…その原因は「建物構造」にあるかもしれません

漏水と聞くと、多くの方は「古い家で起こるもの」「配管の故障が原因」といったイメージを持たれるかもしれません。もちろんそれらも一因ですが、実は新築から数年しか経っていない住宅でも、その「構造」が原因で漏水が発生するケースは少なくないのです。

例えば、デザイン性を重視した複雑な形状の屋根や、大きな窓を多用した開放的な設計は、魅力的である反面、雨水の浸入リスクを高める要因を抱えていることがあります。雨水は私たちが想像する以上に、ほんのわずかな隙間からでも建物内部へと侵入します。そして一度侵入経路ができてしまうと、柱や梁といった建物の骨格を腐食させ、耐震性を低下させるなど、深刻なダメージにつながる恐れがあるのです。

大切なのは、「うちの家はまだ新しいから大丈夫」と過信せず、ご自宅の構造的な特徴と、それに伴う漏水リスクを正しく理解しておくことです。これから、リフォーム業者が特に注意してチェックするポイントを具体的に見ていきましょう。

リフォーム業者が警鐘を鳴らす!漏水リスクが高い建物構造の特徴

全ての建物に漏水のリスクはありますが、特に注意が必要な構造的な特徴がいくつか存在します。ここでは、私たちがリフォームの現場で「ここは危ないな」と感じることが多いポイントを4つご紹介します。

複雑な形状の屋根

屋根の形がL字型やコの字型になっているなど、複数の面が組み合わさっている場合、屋根面がぶつかる部分に「谷」と呼ばれる箇所ができます。この谷には雨水が集中して流れるため、ゴミや落ち葉が溜まりやすく、水の流れが滞ることで漏水の起点となりやすいのです。また、屋根材の接合部や板金の処理が複雑になるため、施工不良が起こりやすい箇所でもあります。

陸屋根(ろくやね)

陸屋根とは、勾配のない平らな屋根のことです。モダンなデザインで人気がありますが、勾配のある屋根に比べて水はけが悪く、雨水が溜まりやすいという構造的な弱点を持っています。表面の防水層にわずかな亀裂や劣化が生じただけで、そこから雨水が浸入し、大規模な漏水につながることがあります。定期的な防水層のメンテナンスが不可欠な構造と言えるでしょう。

オーバーハングや大きな窓があるデザイン

2階部分が1階部分より突き出ている「オーバーハング」や、壁一面の大きな窓は、デザインのアクセントになります。しかし、これらの構造は外壁と屋根、窓と壁といった異なる部材が接する「取り合い」部分が複雑になります。こうした接合部は、シーリング材(コーキング)の劣化や施工精度によって雨水の浸入を許しやすく、漏水の弱点となりがちです。

外壁のシーリング(コーキング)が多い

サイディングボードなど、パネル状の外壁材を使用している住宅では、ボード同士の継ぎ目をシーリング材で埋めて防水しています。このシーリング材は、紫外線や風雨の影響で5年~10年ほどで硬化し、ひび割れや剥離を起こします。シーリングが劣化すると、その隙間から雨水が壁の内部に浸入し、断熱材を濡らしたり、構造材を腐食させたりする原因となります。

【場所別】プロが語る!特に漏水が起きやすい危険箇所ワースト5

建物の構造的な特徴に加えて、具体的にどの「場所」から漏水が起きやすいのでしょうか。ここでは、実際の漏水調査で原因となっていることが多い危険箇所をランキング形式で解説します。

屋根(棟板金・谷・天窓)

最も漏水の原因となりやすいのが屋根です。特に、屋根の頂上を覆っている「棟板金(むねばんきん)」は、台風などの強風で釘が抜けたり、浮き上がったりしやすく、そこから雨水が浸入するケースが後を絶ちません。前述の「谷」や、採光のために設置された「天窓(トップライト)」の周りも、防水処理が複雑なため、劣化や施工不良による漏水が非常に多い箇所です。

外壁(ひび割れ・シーリングの劣化)

外壁も屋根と並んで漏水の主要な原因箇所です。モルタル壁の場合は経年劣化による「ひび割れ(クラック)」、サイディング壁の場合は「シーリングの劣化」が主な浸入口となります。特に、髪の毛ほどの細さのヘアークラックでも、毛細管現象によって雨水を吸い上げてしまうため、油断は禁物です。

ベランダ・バルコニー(防水層・排水口)

ベランダやバルコニーの床は、雨水を防ぐための防水層で保護されています。しかし、この防水層は紫外線などの影響で劣化し、ひび割れなどを起こします。また、排水口(ドレン)に落ち葉やゴミが詰まり、プールのように水が溜まってしまうと、防水層が劣化していなくても、壁との取り合い部分などから室内に水が浸入することがあります。

窓・サッシ周り

窓やサッシの周りは、外壁との隙間をシーリング材で埋めて防水しています。このシーリングが劣化して隙間ができると、雨水が簡単に浸入してしまいます。また、サッシ下の外壁内部には「防水テープ」が施工されていますが、この施工に不備があると、サッシを伝った雨水が壁の内部に入り込み、気づいたときには壁の中でカビや腐食が広がっている、という事態を招きます。

給排水管・設備配管

これまでは雨漏り(雨水による漏水)が中心でしたが、室内で起こる「水漏れ」も深刻です。特に、床下や壁の中に隠れている給排水管は、経年劣化による腐食や、接続部分のパッキンの劣化によって水漏れを起こします。普段目にすることがない場所だけに発見が遅れやすく、床下の湿気やシロアリ発生の原因となることもあります。

あなたの家は大丈夫?建物構造別の漏水リスクと補修方法

漏水のリスクや補修方法は、建物の主要な構造によっても異なります。ここでは代表的な「木造」「鉄骨造」「鉄筋コンクリート造」の3つの構造について、それぞれの特徴と対策を見ていきましょう。

建物構造主な漏水リスク漏水が引き起こす主な被害代表的な補修方法
木造 (W造)屋根、外壁、ベランダからの雨漏り全般。シロアリ被害による構造材の劣化。柱や梁など構造材の腐食、断熱材の劣化、カビの発生、シロアリの誘発。屋根の部分補修・葺き替え、外壁のシーリング打ち替え・塗装、ベランダの防水工事。
鉄骨造 (S造)外壁材(ALCパネル等)のシーリング劣化、陸屋根の防水層の劣化、結露。構造体である鉄骨の錆び、それに伴う強度低下、断熱材の性能低下。大規模なシーリング打ち替え工事、屋上防水工事、外壁塗装。
鉄筋コンクリート造 (RC造)コンクリートのひび割れ(クラック)、打継ぎ部からの浸水、屋上防水の劣化。内部鉄筋の錆びと爆裂(コンクリートが剥がれ落ちる現象)、コンクリートの中性化。ひび割れの注入・充填補修(Uカットシール)、屋上防水工事、外壁塗装。

木造住宅のケース

日本の戸建て住宅で最も多い木造住宅は、水分に弱いという特徴があります。漏水を放置すると、柱や土台といった構造躯体が腐食し、家の耐震性を著しく低下させてしまいます。また、湿った木材はシロアリの大好物であり、二次被害を誘発する危険性も。早期発見と、原因箇所をしっかり乾燥させた上での補修が何よりも重要です。

鉄骨造(S造)住宅のケース

鉄骨造は木造に比べて頑丈なイメージがありますが、漏水と無関係ではありません。雨水が内部に浸入し、構造体である鉄骨が錆びてしまうと、徐々に強度が失われていきます。特に軽量鉄骨造で使われるC型鋼は肉厚が薄いため、錆による影響を受けやすいです。外壁に使われるALCパネルの目地(シーリング)のメンテナンスが特に重要となります。

鉄筋コンクリート造(RC造)住宅のケース

マンションなどに多いRC造は、水密性が高く漏水しにくい構造ですが、一度漏水すると原因特定が難しいという側面があります。コンクリートのひび割れから浸入した水が内部の鉄筋を錆びさせ、膨張することでコンクリートを内側から破壊する「爆裂」という現象を引き起こすことも。建物の寿命に直結するため、専門業者による適切な補修が不可欠です。

漏水補修の実態|プロが行う調査から工事までの流れと費用

「もしかして、うちも漏水かも…」と不安に思われた方のために、実際にリフォーム業者が行う調査から補修工事までの流れと、気になる費用の実態について解説します。

原因を特定する「漏水調査」

漏水修理で最も重要なのが、この「原因特定」です。やみくもに怪しい場所を補修しても、根本的な原因が解決していなければ再発してしまいます。プロは以下のような方法で、水の浸入口を正確に突き止めます。

  • 目視調査:シミやカビの状況、建物の劣化状態を目で見て確認します。経験豊富な専門家なら、これだけである程度の見当をつけることが可能です。
  • 散水調査:漏水の疑いがある場所にホースなどで水をかけ、水の浸入を再現して原因を特定する方法です。確実性が高いですが、時間がかかります。
  • 赤外線サーモグラフィ調査:建物の表面温度の違いを可視化する特殊なカメラを使い、雨漏りによる温度低下箇所を探します。建物を傷つけずに調査できるのがメリットです。

適切な「補修工事」の実施

原因が特定できたら、その箇所に応じた補修工事を行います。例えば、シーリングの劣化が原因なら古いシーリングを撤去して新しく打ち直す「シーリング打ち替え工事」、ベランダの防水層の劣化なら「ウレタン防水」や「FRP防水」といった防水工事を行います。屋根からの広範囲な漏水の場合は、屋根材をすべて交換する「葺き替え工事」が必要になることもあります。

気になる費用と期間の目安

費用と期間は、漏水の原因や被害の範囲によって大きく変動します。

  • 漏水調査費用:3万円~20万円程度(調査方法による)
  • シーリング打ち替え:20万円~50万円(30坪程度の一般的な住宅)
  • ベランダ防水工事:5万円~30万円(広さや工法による)
  • 屋根の部分補修:5万円~40万円
  • 屋根の葺き替え・カバー工法:80万円~250万円

これらはあくまで目安であり、被害が内部の構造材にまで及んでいる場合は、さらに大工工事などの費用が別途必要になります。工事期間も、数日で終わるものから数週間かかるものまで様々です。

まとめ:建物の構造を理解し、早期発見・早期対応で住まいを守りましょう

今回は、リフォーム業者の視点から、漏水が起きやすい建物構造と補修の実態について解説しました。デザイン性の高い複雑な構造や、陸屋根、大きな開口部などは、漏水のリスクを抱えやすいという側面があります。また、漏水は屋根や外壁だけでなく、ベランダや窓周り、室内の配管など、あらゆる場所で起こりうるトラブルです。

最も重要なのは、「小さな異変を見逃さないこと」そして「早めに専門家に相談すること」です。天井の小さなシミや壁紙の浮きなど、「これくらい大丈夫だろう」と放置することで、被害は確実に拡大し、修理費用も高額になってしまいます。ご自宅の構造的な特徴を理解し、定期的なセルフチェックや専門家によるメンテナンスを行うことで、漏水のリスクは大きく減らすことができます。この記事が、あなたの大切なお住まいを長く、安心して守るための一助となれば幸いです。

漏水に関するよくある質問(FAQ)

Q. 漏水の修理に火災保険は適用されますか?

A. ケースバイケースです。火災保険の補償内容に「水濡れ」が含まれていれば、給排水管の偶発的な事故による漏水(階下への水漏れなど)は補償の対象となることが多いです。しかし、経年劣化が原因の雨漏りや、ゆっくりと進行した漏水による建物の損害は、多くの場合で対象外となります。まずはご加入の保険証券を確認し、保険会社に問い合わせてみましょう。

Q. 賃貸物件で漏水が発生した場合の責任は誰にありますか?

A. 建物の経年劣化や設備の不具合が原因である場合、その修理責任は大家さん(貸主)にあります。入居者は速やかに管理会社や大家さんに報告する義務があります。ただし、入居者がお風呂の水を溢れさせたり、洗濯機のホースを外してしまったりといった、入居者の過失(善管注意義務違反)が原因の場合は、入居者が修理費用を負担する必要があります。

Q. 漏水の疑いがある場合、どこに相談すれば良いですか?

A. 雨漏りが疑われる場合は、屋根工事店や板金業者、塗装業者、または総合的に対応できるリフォーム会社に相談するのが良いでしょう。室内の水漏れの場合は、水道業者(指定給水装置工事事業者)への相談が適切です。原因がどこにあるか分からない場合は、まずはお住まいを建てた工務店や、信頼できる地元のリフォーム会社に相談し、専門的な調査を依頼することをおすすめします。

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